令和6年度第2回こまつリビングラボのテーマは「プロデューサーになってみよう!」
令和6年9月8日(日)に令和6年度第2回こまつリビングラボを開催。今回も70名を超える方々にご参加いただきました。
参加者のうち、およそ3分の1の方々が初参加であり、継続的に参加してくださっている方もいれば、初参加の方も毎回たくさんいらっしゃいます。みなさん、いつも本当にありがとうございます!
そして、今回の司会も市民の方と大学生が務めてくれました!
リビングラボの冒頭にはコーディネーターを務めていただいている青山学院大学の野末俊比古教授より「今回は、未来型図書館を構成する重要な要素である「博物館機能」をメインに、みんなで考えていきましょう」とのご挨拶をいただきました。
野末教授によるご挨拶の後、第1回リビングラボの振り返りを行いました。第1回リビングラボの内容については下記の記事をご覧ください。
続いて、今回のメインテーマである博物館機能を検討するにあたり、小松市立博物館の津田館長より、博物館の歴史やこれまでの活動などについてお話いただきました。
津田館長からは、
・小松市立博物館は昭和33年11月に開館し、昭和34年5月には石川県内第1号の登録博物館となった。昭和45年5月に現在の建物が完成し1階には市民ホール、2階には博物館、3階には図書館が入り、昭和56年11月には2階と3階が博物館となり、図書館が現在の場所に移転。平成6年には1階の市民ギャラリールフレが整備され、展示室のリニューアルなども行ってきた。今回の能登半島地震による被害により施設は廃止となり、今後、建物の解体を行う予定である。
・歴史資料(古文書・絵図・古い写真など)や民俗資料(昔に使われていた生活の道具)など、重要文化財・重要有形民俗文化財を含む約53,000点の収蔵品がある。
・これまで、年1回程度の特別展の開催(おもに秋に開催)や年3回程度の企画展の開催(春・夏・冬に開催)などを行ってきたほか自然観察会などのイベント開催にも取り組んできている。
・そのほか、令和4年度にホームページをリニューアルし、所蔵品検索等による資料公開(収蔵品5万点あまりのうち約1万点を公開中)を行っており、資料のデジタルアーカイブ化や、調査研究・レファレンス(学術的な問い合わせの対応)などにも取り組んでいる。
など、昔の写真なども用いてこれまでの博物館の歴史や活動状況について丁寧にお話いただきました。
続いて、宮橋市長が到着され、宮橋市長からは、
「能登半島地震により、公会堂や博物館が大きな被害を受け利用を停止しており、廃止を決めたところである。今後は施設解体に向けて進めていく予定であり、今議会では解体に向けた設計に係る予算を計上中である。今年度、解体設計を終えて来年度には解体作業を行っていく予定。解体により、60年以上変わらなかった景色が大転換を迎えることとなり、未来型図書館が整備されることで、全く違った風景になる。今の公会堂や博物館に思い入れがあるみなさんの想いを未来へしっかりと繋いでいきたい。」
「今回のリビングラボは、博物館機能とのコラボレーション企画の検討であり、博物館と図書館の融合を考えていくにあたって、みなさんからの知恵やアイデアをいただきたい。また、最近では、九谷焼とシューズメーカーとのコラボレーション企画なども展開されており、今まであったものを組み合わせることは面白い取り組みであり、融合や掛け算されることで新たな価値を生むと思っている。今回のリビングラボでも新しい価値が生まれるような企画がたくさん出されることを期待している。」とのご挨拶をいただきました。
続いて、野末教授と公立小松大学国際文化交流学部杓谷茂樹教授より「図書館と博物館の融合・連携」をテーマにショートレクチャーを行っていただきました。
杓谷教授からは、
「博物館では、モノを見るだけではなくモノに触れるような体験ができることも珍しいことではなくなってきた。また、モノがなくともバーチャルの活用もあり、有形でなくても人々の暮らしの中にある習慣や知恵などの無形文化遺産なども展示の対象になると考える。AIなどの活用も始まっており、これからそういった最新技術の活用などはどんどん普通になってくる。博物館は私たちと一緒に現代社会を生きている存在であり、技術も進歩していくことを踏まえると「現代的博物館」と表されるであろうし、私たちの「未来型博物館」を構想していかないといけないのではないかと考えている。」
「図書館との融合を目指していくうえでは、「未来型」という考えのもと図書館や博物館、その他機能が結びついていくイメージで捉えていきたい。様々な機能を融合させていくうえで仲立ちするのがこの「リビングラボ」であると考えており、みんなの対話のもと、カタチづくっていく仕組みこそが「未来型」であると感じている。」
また、野末教授からは、
「図書館と博物館は似ているけど少し違うところがあり、だからこそ一緒になることに意義があると思っている。全国的にも図書館と博物館の融合事例は少ないと感じており、同じ建物内に整備されていはいるものの様々な活動や企画など、別々に行っている印象がある。図書館や博物館の融合や協働を進めていくうえにおいて、例えば図書館は情報の収集や整理が得意であり、博物館は資料の収集や保管、展示などが得意であり、一緒になるところと違いをもたせるところを整理し、それぞれの良いところを活かしていくこと、うまく組み合わせていくことが大事である。また、リビングラボの場などを活用しながら、新しくできる施設でどのような活動をしたいか、こういう活動が生まれると良い、など具体的な活動を創造していくと小松ならではの施設が出来上がっていくと思っている。」
など、未来型図書館の整備においても重要なテーマである「図書館と博物館の融合」についてお話いただきました。こうしたテーマについて検討し、施設の今後のあり方や未来像を考えていくうえでも、このリビングラボが重要な役割を担うことを改めて感じました。
続いて、今回のワークショップの流れや内容について市の事務局より説明させていただきました。
今回のテーマは「プロデューサーになってみよう!」。第1回リビングラボでは、未来型図書館の核となる図書館機能を構成する上で重要な「ライブラリーテーマ」を考えました。その中で生まれたライブラリーテーマをもとに、今回は、博物館や他の機能とどのような融合・連携を生み出せるかプロデューサーの立場になって考えるというもの。
また、ライブラリーテーマを核とした企画を考えることで、施設全体が真に機能融合するために必要となるリソース(人材やスペース・ 設備など)や
機能間の関係性を把握し、第3回の建築空間イメージマップ作成につなげることを目的としています。
事務局の説明が終わり、いよいよワークショップがスタートです!
今回の個人ワークでは、第1回でみなさんで考えたライブラリーテーマから1つ選び、博物館機能やその他の機能との融合・連携した企画を1人1つ考えました。
個人ワークシートなどはこちら!
個人ワークの記入が終わった後は、グループ内で自分が考えた企画案を一人ずつ共有しました。
また、ワークショップの合間には、今回も最新技術を活用したサービス体験会も行いました。
今回は、ヤマハ株式会社様より、「スピーチプライバシーシステム(製品名:VSP-2)」を貸与いただき、参加者の方に体験いただきました。
この製品は、会話の内容が第三者にも漏れ聞こえてしまうことを防ぎ、プライバシーを守るヤマハ独自の「情報マスキング技術」によるソリューションです。また、周囲から聞こえてくる会話の内容を分かりにくくすることで、他人の会話が気になって作業が妨害される状況を改善し、集中のしやすさや居心地の良さを向上させる効果があるそうです。図書館のような公共施設において、新技術の活用によって静かさや居心地を向上させられることができそうですね。
個人ワークの内容をグループ内で共有した後は、それぞれが考えた企画に対して、グループのメンバーがさらなるアイデアを提案したり、企画同士のコラボレーションなどができないかを考えました。
また、他のグループの検討結果の見学も行いました。同じテーマで同じワークを行っていても、グループによって個性が出ていて面白いなどの意見も聞かれました。
他グループへの見学の後、最後に全体共有のためグループごとに発表を行いました。
「私のとっておき展や私の推し本などのテーマが出てきた。まとめると「推し」要素があふれていて、大きなテーマとして「推物館(おしぶつかん)」を掲げた。推しはアーティストだけではなくグルメや本など多様な対象があり、自分の推しをみんなで共有できる場所があると良い」といったユニークなアイデアが出されました。
また、「大前提として気軽に訪れることができる施設であるほか、異文化交流、昭和の雰囲気を味わえる出展や体験など、様々な視点からアイデアが出されたが、要素が様々あるなかで、様々な要素や材料が一緒になって、サンドイッチのようにコラボレーションされることで、小松の人や文化などを知ることができるイベントなどが開催できそうだ」など、各グループから多様なアイデアが出されたワークショップとなりました。
グループ発表を終えて、最後には野末教授と宮橋市長よりご講評をいただきました。
野末教授からは、
「博物館や図書館の融合は非常に難しいテーマであるが、今日わかったことは、その答えは市民のみなさんの中にあるということ。この難しいテーマを実現できれば、「ウラ日本」どころか日本で一番となるのではないか。リビングラボは施設が完成した後も続いていく活動であり、今の段階からアイデアを育てていって、施設が完成した後にも成長させていけると良いと感じた。」とのお話をいただき、
宮橋市長からは、
「今回もみなさんの発表などを聞いてとても感動している。未来型図書館という言葉が浮かんだのは8年前。まさかこのような活動などに繋がるとは思ってもみなかった。施設づくりは、ハードな面ばかりに議論がいきがちであるが、施設や建物をどのように使っていくのかを今から議論していくことは素晴らしい取り組みであると思っている。図書館という視点でも、指しているものが本ではなかったり、博物館においても展示しているものが市民のみんなが持ち寄ってシェアできたら面白いなど、もはや図書館や博物館ではない新たなものができあがろうとしており、非常に感動している。リビングラボのような活動は、施設が完成した後も繋がっていくように、こうした対話の機会をずっと続けていきたいと考えており、そういった仕組みづくりに取り組んでいきたい。このような場に参加しているみなさんには、様々な対話の場をリードしていただけるものと期待している。」とのお話をいただきました。
第2回も子どもたちから大人まで世代や立場を超えて、みんなで楽しく開催することができました。このリビングラボは初参加の方も大歓迎です!
次回第3回は10月5日(土)に開催します。
みなさんのご参加を心よりお待ちしています!