「大人の社会見学、宮本三郎美術館」
聞いたことはあるが行ったことがない。そんな方もいるのではないだろうか。
小松市役所の周辺には文化施設がたくさんあり,その一つが今回取材に伺った「宮本三郎美術館」である。
実は私も館内に入ったのは初めてだった。
「明るい」館内の第一印象である。
外から見ているだけでは想像出来なかった。
館内は昭和16年の石張りの倉庫棟とモダンなガラス張りの新館から成り、その二つをブリッジが繋ぎ、「歴史と伝統」「未来への展望」がコンセプトとなっている。
宮本三郎は小松市出身の洋画家であり、館内には彼の油彩画、素描、絵皿、遺品などが収蔵、展示されている。
伺ったのは9月末。ちょうど第7回宮本三郎記念デッサン大賞展が開催されたいた。日本全国はもとより、海外からの応募作品もあり驚いた。美術センスに乏しく美術館をほとんど訪ねた事がない私だったが、緊張しながらもゆっくりと展示されている作品を鑑賞した。
静かな空間の中、時間をかけてゆっくりと鑑賞していると、絵についてはわからないが(全ての作品について「すごい!」としか言葉が出ないくらいの美術初心者である)何故か背筋がピンと伸びて、それでいて心が穏やかな、非常に優雅な時間を過ごしていると感じた。
この美術館は建物自体も非常に魅力的で、石張り倉庫は当時の建物を再利用してあり、今ではあまり見ることが出来なくなった建物の構造を見ることもできる。一方新館はモダンなガラス張りに吹き抜け、天井が高く明るく開放的で、一つの美術館で二度楽しめるようなお得感があった。
宮本三郎美術館。私にとっては心が穏やかになる空間でもあった。
さて、前館長の二木さん伺ったお話の中で、印象に残った事を二つ。
まず一つは「宮本三郎」について。
彼は画家としてはもちろん、人としても非常に魅力的な人物だったようで、話好きであり、また、絵の評価をする時はその画家の他の作品も全て頭に入れ、その画家の他の作品と比べながら良いポイントを評価する人だったとの事。私が写真で見る宮本三郎さんからはちょっと想像出来ない人柄で、彼に興味がわいた。
「宮本三郎南方従軍画集」の中では、自伝ともとれる文章があり、彼の幼い頃からの出来事や感情の変化などが書かれてあり、宮本三郎という人物が更に魅力を増した。
もう一つ、未来型図書館について。
交通手段がなく図書館を利用できない人や小さな子供や赤ちゃんがいて、行きづらい人たちもいる。気軽に歩いていける図書館がほしいという意見をご近所の方々から受け、そんな方々のために市内のあちこちで散歩ついでに本を借りられる本棚一つ分の「小さな図書館」が増えるといいなとの思いで、なんと二木さん、自宅前に「小さな図書館」を作ったとの事。驚きと感動と共感。本当に素敵な「小さな図書館」だった。
そのためにコツコツと絵本や本を集めてきたと言い「すごいですね!」と伝えた後、「本気やよ」とニヤッと答えてくれた二木さんの笑顔が忘れられない。
一部ではなく、全ての市民が様々な形で利用でき、笑顔になる未来型図書館を期待したい。
最後に二木さんおすすめの1冊
「チェクポ おばあちゃんがくれたたいせつなつつみ」(イ・チェニ文 福音館書店)
誰もが一度は経験したことのある感情や行動。大人が読むと懐かしい気持ちになる絵本。