令和6年度第3回リビングラボのテーマは「未来型図書館を建築しよう!」
令和6年10月5日(土曜日)に今年度第3回目となるリビングラボを開催。今回も約80名というたくさんの方々にご参加いただき、前回に続いて市民の方と公立小松大学の学生が司会を務めてくださいました!
お二人の自己紹介の後、宮橋市長より、「毎回多くの皆さんにご参加いただき、楽しく対話ができていることを嬉しく思っている。これまで「未来型図書館」と名付けて取り組みを進めてきたが、前回のリビングラボでは、図書館や博物館がそれぞれに役割はあるにせよ、これから整備する未来型図書館はそれらを超越した役割を担うのではないかと感じている。9月議会では、未来型図書館に関する質問をいただいたほか、公会堂等の解体設計の予算も上程した。これから解体設計のうえ、来年度には解体作業に進むこととなり、いよいよ新しい施設に向けて動きだす。活発に動いているこのリビングラボは、施設が完成した後もしっかりと活動を繋げていきたいと思っている。また、小松市ではこのようなリビングラボなどの対話の場をファシリテーションできる人材の育成にも取り組んでおり、今年度も第3期イノベーションファシリテーター講座の受講生を募集しているので是非、受講いただきたい。」とのご挨拶をいただきました。
続いて、リビングラボのコーディネーターである青山学院大学の野末教授より、「宮橋市長のご挨拶にもあったとおり、リビングラボは施設ができた後も続いていく。先日、石川県立図書館に訪れた際に館長などから「未来型」とはどのようなイメージか?と聞かれ、「市民のみなさんが協働・共創しながらリビングラボを通じて施設やまちなどを創り動かしていく未来のカタチである」と答えた。リビングラボは生活の中で様々試行錯誤しながらまちや人生、未来を創っていく場として捉えている。」とのご挨拶をいただきました。
お二人にご挨拶いただいた後は、事務局より、これまでのリビングラボの振り返りと現在進めている「基本計画」について取り組み状況をお話させていただきました。
9月議会では、未来型図書館の核となる図書館機能と想定する事業範囲についての考え方や方向性についてお示しさせていただきました。詳しくは、下記の市ホームページをご覧ください。
https://www.city.komatsu.lg.jp/soshiki/1009/miraigata/15221.html
続いて、建築を考えるうえでポイントとなる図書館機能の「集約型」と「分散型」について建築家のマル・アーキテクチャの方々より全国の事例を交えてお聞きしました。
「集約型は、階層で別れているようなパターンがあり、本を探すときに特定のフロアに行けば良いといったわかりやすさがある。また、書架や閲覧スペースもあり、落ちついた空間で読書ができる点なども特徴として挙げられる。一方、分散型は、最近では図書館で本を読むだけではない活動をするといった動きも出てきており、例えば、ダンスなど体を動かすような空間にダンスに関連する本が置いてあるなど、活動と情報が密接に結びついていることが特徴的である。また、そういった空間では人と本などの偶発的な出会いが生まれやすく、分散型は他機能と混ざりあうように図書館機能が分散している点も特徴的である。第1回のライブラリーテーマや第2回の博物館機能との融合・連携による企画などを参考に、活動と本がどういった関係だと良いのかを考えながら検討してみてほしい。」とのお話をしていただきました。
続いて、野末教授によるショートレクチャーでは、「今回はみなさんに建築家になりきってもらい施設の中身について考えていただく。図書館は広い意味で学びの空間であり、読書や活動、交流をしたり学んでいく空間として、教育の世界でも学習環境のデザインは大きなテーマとなっている。小学校の教室を思い出してみると、教室には「教材(教科書等)」やノート・鉛筆等の道具である「教具」、「教師」、そしてその空間をつくっている「教室」の4つの要素がうまく組み合わさっており、それらが組み合わさることで良い学びになるといわれている。そういった空間をどのようにデザインするのかといった点は教育の世界でも大切であると言われており、図書館は、資料もあり、道具や空間、司書などもおり4つの道具が揃った珍しい世界であるといえる。」
また、「図書館機能を考えるうえでは、書架と閲覧テーブルが別にあった方が良いという場合などは、書架を集約しているタイプがあり、書架の近くに読むスペースがあった方が良いという場合は、書架の間にテーブルを設置しているタイプなどがある。カウンターなども本の相談や貸出、検索場所と同じ空間にある方が良いのか、別々の方が良いのかなどといった視点もあり、どちらが正解・不正解といった答えはなく、どのような図書館にしたいのかによって決まっていく。また、1人で活動するのか、大勢なのか、声は出して良いのか、使用時間や飲食、明るさなどなるべく具体的な状況や活動を思い浮かべると良いと思う。小学校を例に出すと、グループワークを行う際には机を動かしたりするため机が可動式になっており、利用シーンに応じて使うことができる。一方、固定である方が良いものもあり、理科室や音楽室、図工室などは特別な道具などが置いてあり、作り込んだ方が良いといった視点もある。また、施設に入ってから同じ場所にずっと滞在することは少なく、人の動きがあるような空間的なひろがりや人の動線についても時間の経過とともに考えると良い。過ごす時間の経過を考えながら空間的な軸と時間的な軸で考えてみてほしい。」といった具体的な利用イメージを持ちつつ時間軸や同じ空間を多用途に使う視点などについてお話いただきました。
ショートレクチャーの後は、事務局よりワークショップの流れなどについてご説明させていただきました。
恒例となってきた事務局による説明時の「寸劇」ですが、回を重ねるごとにレベルアップしており、参加者の方からは「次が大変ですね」と励ましのお言葉をいただきました。(本番に向けて一人ひとりが個人練習にも励みながら臨んでいることはここだけの話・・・笑)
今回のワークショップでは、こちらの個人ワークシートをもとに、まずは未来型図書館の外観や内装などについて考えていただきました。
個人ワークが終わった後は、グループワークでそれぞれが考えた未来型図書館のイメージを共有し、対話を通じてグループごとに建築空間を考えるというワークショップです。
第1回リビングラボでは図書館機能を構成する上で重要な「ライブラリーテーマ」を、第2回では、博物館や他の機能との融合・連携による企画を検討しました。今回は、それらを実現する未来型図書館の空間(建築)を建築家の立場になって考えました。機能の関係性を考えながら空間(建築)を具体化していくことよって、今年度取りまとめる建築空間イメージの作成に反映していきます。
事務局の説明が終わり、いよいよ、ワークショップがスタート!
一人ひとり共有した後は、みんなで様々なアイデアなどを出し合いながら、建築空間を模造紙上に描いていきます。
また、今回もワークショップの合間に、民間事業者さんのご協力による最新技術の体験会を行いました。今回は、ソフトバンク株式会社様より「SureTalk」のデモ体験を提供いただきました。こちらは、手話動作の特徴をAIが認識し、手話の動作に応じた内容をリアルタイムでテキストに変換し、また音声もリアルタイムに変換することで、手話ユーザーと音声ユーザーのコミュニケーションを円滑にするサービスです。
みなさんには「ありがとう」や「こんにちは」などの挨拶や「飛行機」などの手話にもチャレンジしていただきました。みなさんからは「未来型図書館のカウンターや行政窓口などでも活用できそう」という声が。ソフトバンク株式会社様、ありがとうございました!
そして、グループワークの後には、最後に全体共有を行いました。
こちらのグループでは、「歩きたくなるまちといった意味合いのウォーカブルと気軽に立ち寄れるバルをかけ合わせて「ウォーカバル」というネーミングに。コンセプトは「巡る・出会う」。建物単体で完結せずに、まち歩きの延長線上にあるような施設をイメージ。1階から3階は縦の空間として吹き抜けでつながっていて、1階はまちと開かれるためガラス張りでカフェなどもあり開放的な空間に。2階は本などの書架がメインでお気に入りの場所で落ち着いて読書ができる空間なども。3階はさらに落ち着きのある空間で会議室や事務的な機能があって、屋上には日本海に沈む夕日をみながら黄昏時にワインを気軽に飲めるような空間も。図書館機能は分散型で、吹き抜けに沿って様々なライブラリーテーマや情報や活動と出会えるような、歩きながら巡り出会えるような建築空間をイメージした。」との発表をしていただきました。
そして、こちらのグループのネーミングは「はいろっさ〜」。
「ネーミングは、気軽に訪れることができるイメージから。1階は全体的に賑やかでキッズルームなどがありその周りに図書スペースなども配置。中から外の景色も見えて木材を使った温かい雰囲気も。2階はテラスがあって公園の自然を楽しみながら食事ができて、書架も設置しゆったりとした空間に。また、ティーンズスタジオがあって、曜日ごとでうるさくしても良い日と静かな日を決めて利用者のニーズに対応。3階はシックな空間で落ち着いた雰囲気に。学習スペースなどがあって静かな空間で勉強や会議ができて集中できる。また、施設全体は縦のつながりを意識していて、1階は5、6歳くらいの子どもたちがメインとなりそうなキッズルームがあって、数年後には中学生・高校生になって2階のティーンズスタジオなどで過ごすイメージ。3階は大学生や社会人になって勉強や仕事に励める空間で、自己成長の階段を登るようなイメージで描いている。」
そして、ドーナツのようなイメージのこちらのグループのネーミングは「いつどこ」。
「全体コンセプトはいつでもどこでも包容感や安心感が感じられるような施設に!との思いを込めて。図書館機能は分散型で一部集約型も取り入れる。施設の形については、様々な意見があったがドーナツ型にして真ん中が吹き抜けになっていて一体感が出るようにしている。1階は子どもから大人まで多世代が集える「賑わい」のエリア。2階は「混じり合い」がテーマでティーンズや20代が音楽スタジオなどで活動できて、博物館機能もあるフロアに。3階は「じっくり深める」がテーマで会議室や書架がある静かなエリア。そして、施設の真ん中には未来型図書館の重要な機能である「リビングラボ」があると良いと感じている。」
など、各グループでそれぞれ特徴のある建築空間が完成しました!
そして、グループごとの発表後、野末教授と宮橋市長より講評をいただきました。
野末教授からは、「図書館はこれまで行政や研究者などが中心に利用者を想定して導き出してきたアイデアが多かった。今回のみなさんからのアイデアでは、時間帯や人間の成長軸でフロアを分けたり、吹き抜け空間による一体感を出す視点など研究者がやっと辿り着いた考えなどがみなさんの中にあることがわかった。市民のみなさんがこういう機能が良い、こういう理念で使っていこうという思いをこれから実現していけるかが大事。今回、様々なタイプの建築空間が出てきたが、施設として整備するものは1つ。しかし、様々な用途に使えるよう可変性のある空間づくりも可能であり、少しずつ使い方やサービスを変えていけるものもあり、みんなで考えていることを創りながら育てていく視点が大事である。そのプロセスの中で徐々にでみんなのやりたいことが実現できていくのではないか。インドの図書館の専門家S.R.ランガナタンの言葉に「図書館は成長する有機体」という言葉があり、今日のリビングラボでまさにこの言葉を痛感し、未来型図書館がみんなで創って育てていく、成長していく施設になると感じた。」とのご講評をいただきました。
宮橋市長からは、「野末教授のおっしゃったとおり、1つしか施設はできないが、成長したり動きがあるような施設を目指したい。完成して終わりではないという視点が大事であって、基本計画にも今日出てきたキーワードを反映していきたいと思うと同時に、みなさんのワークショップでの対話や発表を聞いて、図書館の概念的なものを考えていた。これまでの図書館でも博物館でもないような「新たな概念」を小松から新たに発信していきたいと思っており、それはきっと日本のモデルになるのではないかと感じている。今日みなさんからいただいたキーワードを大切にしながら引き続きみなさんと一緒に未来型図書館づくりを進めていきたい。」とのご講評をいただきました。
第3回も終了予定時刻をオーバーするほどの盛り上がりをみせたリビングラボ。次回第4回は12月7日(土曜日)に開催予定です。
次回もみなさんのご参加を心よりお待ちしています。
第3回にご参加いただいたみなさん、本当にありがとうございました!